電動アシスト自転車のバッテリーチョイス!

モーターのエネルギー効率が80%を超えた今日、とりあえずモーターはBBS-02を選んでおけば問題ない。
そしてBBSでカバー出来ないような要件をお持ちの方であれば、当然ながらこんな所を参考にするまでも無く何をどうすれば良いのかはご存知のはず。

が、しかし。
バッテリー選びは悩ましい。
長きにわたり石油社会に抑圧され続けてきた電池の世界は未だ発展の途上、現時点で製品化を待つばかりとなっている新技術だけでも、いきなり性能が7倍になってしまうというトンデモない状況にあって、決してお安くは無いバッテリーで何を選ぶかは本当に悩ましい。

例をあげるならおっさんの積載バッテリーは25kg。
LifePo4が18kgにLipoが7kgで合計56Ah。
5年後と囁かれる新技術の市場投入が行われればその重量は僅か3.6kgに圧縮されてしまうわけで、これはもぅ何をおいても買うべきシロモノ。

とりあえず、これからの世界を牽引するのはガソリンでは無く電池なわけでござーます。

で、電池を選ぶ際に最低限知っておかなければ話にならない事が幾つかあるわけで、文字ばっかで長くてつまらなくても、失敗したくない人は我慢して読んどけ的な感じです。

まずはじめに電流(A)と電圧(V)。
電流はトルクに影響し、電圧は回転域に影響します。
厳密にはアレですが、あくまでも電動自転車を運用するに理解しやすい形で綴っていきますのでそういうことでひとつよしなに。
高回転(高速)で走りたければ電圧を上げ、加速や登坂が欲しければ電流をデカくせよと、そういうわけです。
そしていかに電圧が高くとも、充分な電流が無ければ力及ばず進まないという事です。
ミニ四駆のモーターがどんだけ高回転でもサイズ的に許容電流がちっさ過ぎて自転車は走らないし、反対に大電流を流そうとも24V程度のモーターではロードバイクを追い抜けなかったりしちゃうわけですね。

故に、バランスが大事。
で、電流量はさておきフル電で使うなら電圧は48Vがガチ
36Vもそこそこ普及してますが、あとから絶対48Vが欲しくなるので。
ちなみにオートバイとガチでやりあうとかいうモンスターマシンを組むなら最低でも72Vあたりの構成になるだす。

さて、電圧が48Vに決まったので次は積載容量です。
10Ahのバッテリーなら10Aを一時間放出できるわけで、何Aで何時間走りたいかが決まれば自ずと積載容量も決まります。
何Aかは即ち希望の巡航速度ですね。
ベースが自転車なんで個人の運動能力、車体性能、何にも増して風向きなんかの影響があるので「これ、何キロでるの?」とかアホな質問でしかない訳ですが、独断と偏見で以下のように提示します。

2.5A(125W)=25km/h
5A(250W)=30km/h
10A(500W)=40km/h
20A(1kW)=50km/h

勿論コレは高rpmで可変ギヤ比が利用出来るBBSシリーズの場合の話で、モーター回転が固定となってしまうHUBモーターではそれなりのロスが出ます。
また、電流が二倍になったら速度も二倍というわけでは無いので要注意。
と、言うわけで、40km/hで2時間走りたかったら20Ah積んどけと。
が、しかし。
20Ahのバッテリーがどの条件でも20Ahの容量を使いきれるわけでは無いのが第一の罠。

前提として、48Vのバッテリーは48Vきっかりではありません。
Lipo(リチウムイオン電池の一種)だったら3.6Vのセルを13本直列で繋いで46.8Vになる構成を48Vバッテリーと呼び、満充電時には4.2V×13Sで54.6Vあり、使うにつれ電圧が降下、41VあたりでEMPTY扱いとする風潮。「風潮」というのは実際の放電限界32.5Vまでなものを、そこまで深放電してしまうと著しく電池の寿命に悪影響なのでセルあたり概ね3.15Vで放電ストップする事にしてる装置が多いという事です。

つまり、バッテリー切れというのは本当に空になる訳では無く、ある一定のレベルまで電圧が下がるとそこで「電池切れ」という扱いにするという事なわけです。
故に、電圧降下を加速するような大電流の放出を行った場合、本来の容量よりも少ない放電で電池切れになってしまうわけです。

ではどれ位の電流量ならロスが無いかと言うと、それは電池の種類や製品ごとの性能に依存するわけですが、概ね0.2C(※Cという単位は電池容量に対する電流量で、10Ahの1Cが10A)くらい。
10Ahのバッテリーなら2A程度までで、それ以上は少しずつロスが生まれ、0.5Cを超えたあたりからロスが増大、1Cを超えると劇的にロスが出ます。

500WモデルのBBS02はフルパワーで18A。
10Ahのバッテリーで4.5A設定にすると、3時間弱で80kmほど走り切れます。
これを約1Cの9A設定にすると1時間強で40km、フルパワー2Cの18Aでは15〜20分で15〜20kmほどしか走れません。
ところがバッテリーを20Aにすると、18Aでも1Cなので稼働時間は1時間強となり、50kmほど走行出来るわけです。
つまり「10Ah×2本よりも20Ah一本の方が沢山走れる」という事です。

加えて電池は充放電回数に応じて劣化します。
Lipoであれば300〜500回で本来の容量の70〜80%まで減少します。
放電深度が深いほど電池へのダメージが大きく、サイクルが減る為、使いきらずに余裕をもってこまめな充電が長持ちのコツ。

よって「どのくらいの速度でどのくらいの距離をどのくらいの頻度で走りたいのか?」という三要素を元に、電圧降下ロスやサイクル劣化も加味してバッテリーの積載量を決める必要があります。
例えば往復30kmの通勤に40kmの走行が出来るバッテリーでは、2年後のある日、家まで帰って来られなくなるという罠が待っているわけですね?( ̄ー ̄)ニヤリ

さぁここまで来てようやっと最終項目、バッテリーの種類決定とあいなります。
とりあえず選定は2択。
いずれもリチウムイオン電池で、コバルトやマンガンを材料としたLipoバッテリーか、リン酸鉄を材料としたLiFePo4の2択です。
鉛とかニッ水は重いやら火力不足やらで電アシなママチャリにしか使えません。

それではざっくりと比較評価してみまそ。

※48V構成 Lipo LiFePo4
直列数 13 16
48V電圧 40.95〜54.6V(動作電圧46.8V) 44.8〜57.6V(動作電圧51.2V)
セル電圧 3.2〜4.2V(動作電圧3.6V) 2.8〜3.6V(動作電圧3.2V)
サイクル(寿命) 300〜500回 1000〜2000回
10Ahの重量 2.5〜3.5kg 5kg
放電曲線 ゆるやか(=電池残量は把握しやすいが、後半戦は回転数が上がらない) 水平(=使い切るギリギリまで高いポテンシャルをキープするが、電池残量が把握しにくい)
ショート耐性 低い 結構安心
氷点下稼働性能 弱い 激弱い
主力乾電池型 18650 26650
製品形状 種々雑多、筐体豊富 生セル or ビニールパック、たまにしょぼいケース入りもある
ブランド PanasonicやSANYO、SAMSUNGなど、価格3倍で容量1〜4割増しの高級ブランド品もある 溶接無しで組み上げられるHeadwayの他は無名ブランドが殆ど

10kgのロードバイクを3kg軽くするために50万円突っ込むくらいがちょー普通な自転車の世界にあって、LiPoとLiFePo4の重量差はあまりにも大きい。
例えば秋田から東京までの500kmを無充電で楽々走ろうと思うと500W走行で120Ah、ちょっと頑張って250W走行なら80A、この時LipoとLiFeでは30kg対60kgの20kg対40kg、自転車というベース車両を考慮すれば、Lipoならギリギリ積めてもLiFeはちょっと無理。

反対に週5で通勤に使った場合、往復分のバッテリーを積んで走るなら1年半、少しでも軽くしようと片道分で職場で充電するような使い方をした場合1年持たずにLipoバッテリーは寿命を迎えます。
そこで耐用サイクルを延ばすため、深放電しないように必要容量よりも多めに搭載する事なんかを考えるわけですが、そうなると結局LiFeと変わらない重さに…。

更に電池は気温が下がるとコレまた電圧降下を起こして実効容量が減ります。
20〜25度Cあたりを標準とするなら、0度C環境では走行風にも熱を奪われ、LiFeなら本来スペックの半分程度の容量になってしまいます。
対策として断熱バッグに充電カイロを仕込んでやったりと、寒冷地仕様化の苦労がついてくるわけです。
LipoはLiFeよりも極寒地での劣化が緩やかなので、簡単な対策でもそこそこ効果がありますね。

なかなかに悩ましいでしょ?

これらの内容を踏まえて、用途に応じたバッテリーチョイスを整理してみましょう。


1. 毎日乗る人はLiFeを毎回使い切り容量よりもちょっとだけ多く
2. 1日の移動距離が30km以下でフルパワーは求めない、もしくはそんなに毎日乗らない人なら10AhのLipo
3. 無充電超長距離やりたいならLipo大容量で数年後の電池革命を待つ
4. 上記以外の中間用途では買い替え資金に困らないならLipo、長く使いたいならLiFe

こうして整理するとアッサリ決まりそうなんですが、大抵は「折角だからたまには遠くまで行きたいかな」という思いが込み上げて来て悩む事になるわけです。
しかし日々の用途とたまの旅行をごっちゃにしてはいけませんな。
たまの旅行用途は別途で40〜80AhのLipoを用意して、ファンレスの急速充電器でネカフェ充電を検討するのが上策。
急速充電もサイクル寿命を縮めますが、たまの事だし、何よりネカフェのブレーカーを落とさないよう配慮すると1000Wクラスの充電器が限界ですから48Vなら15A程度、急速充電といっても40Ahバッテリーで0.375C程度ですから可愛いもの。
シーンに応じて5〜10Aで200kmほど走ったら2時間半の充電休憩というのが現状で出来る最良の策。
何故にもっと大容量で無いのかといえば、充電の為に10kgのバッテリー担いでウロウロするのはまぁ大して苦では無いのですが、これが20kgとかだとかなりの苦行、勿論40kgの装備を背負って100kmの徒歩行軍を生業とされている方だったりしたら話は別なわけですが( ̄ー ̄)ニヤリ

さて、概ね選定の目安が出揃ったところであと2つ。
「リチウムイオン電池って爆発しませんか?」と「大容量一本と、半分の容量2本はどちらが正解?」という弊社で頂く質問ランキング独走のテーマでございます。

まずリチウム電池はその辺の乾電池なんかよりも扱うエネルギー量が激烈多いので、故障に気づかず使い続ければ爆発する事もありますね。
充電器とバッテリー側のBMS(制御基板)が同時に故障して、そのまま電気を詰め込み続ければやがては破裂するわけです。
但し、これは双方同時故障が条件なので、Youtubeにアップする為に電気的知識を持ってうまいこと必要な安全装置のみを絶妙に除去出来ないと難しいです。

そして使用中のトラブルですが、電池皮膜がザックリ切れるほどブツけてそのまま使ったり、BMSを取り外して生セルのみで使ったりすれば、そのうち過放電で火を吹く事はそれなりにあり得ます。

因みにおっさんは最初の頃に無理やり並列直結してオンファイヤーしながら走った事がありますです(*/∇\*)キャー

いずれにしても普通にしてればまず遭遇しない事態で、更に独特の異臭と発熱などの前兆があるので、大抵はやらかしちゃえば気付きます。

とはいえ爆発や発炎など大変危険ですので、携帯電話やノートパソコンを使用するのと同じように、日々注意を怠らず付き合って行く必要がありますです。

最後にバッテリーは1個積みか2個積みか?
というテーマですが、走りの感覚で現在出力と残量がわかるようになるまでは、可能であれば2個積みが吉です。
気温や風向きで消費する電力量は変化しますし、特にLiFeは残量メーターがあてにならないので
「1本使い切ったら2本目で控えめに帰る」
という運用が安心ざーます。

ニコイチしたLipo

ニコイチしたLipo

勿論2本に分割すると電圧降下の関係で容量ロスが増えるので、把握できるようになってからは1本にまとめた方がお得です。

良い子はマネしちゃダメですが、おっさんはこんな感じで古くなった10Ahをニコイチして底上げ、リザーブにして不意の大寒波対策とかにしてたりします。

以上、おしまい。